コラム
COLUMN睡眠とアンチエイジング
睡眠とアンチエイジング
みなさん、こんにちは。
渋谷睡眠・呼吸メディカルクリニックの楠です。
もう12月です。寒さも一層厳しくなり、いよいよ冬本番ですね。皆さまにおきましては年末年始に向け、バタバタと忙しい毎日を送られていることと思います。当院も開院から1か月を無事過ぎ、慌ただしい日々を過ごしております。
さて、今回は長文コラムの第2弾。当クリニックのスタッフからのリクエストがあったので「睡眠とアンチエイジング」を題材にコラムを書いてみました。現代は男女ともに健康志向や美意識も高まり、男性も日焼けを気にし、脱毛をする時代です。アンチエイジングというと美容系のクリニックなどを想像しがちですが、それは体の表面的な対処法になります。体の中から健康と美を保っていくためには、やはり日常生活の改善や意識改革は必須です。
その中でも良質な睡眠を十分にとることは大変重要になります。老化を一つの病気ととらえ、その原因や予防法を探り、”健康寿命”を維持することは、これから少子高齢化社会を迎える日本人にとって、女性だけでなく男性にとっても重要な分野になります。今回は、健康寿命を維持するためにどんな生活を送ったらいいのか、睡眠についても触れていくので、お付き合いください。
無呼吸症について知りたい方はこちらのコラムもご覧ください。
LINEのお友達登録もよろしくお願いします。
はじめに
人間はなぜ睡眠をとるのでしょうか?
人は、肉体的な疲れをとるだけでなく、体を支配している大脳の働きを健やかに保つために眠ります。
眠りには、レム睡眠(眼球運動を伴う浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)の2種類があります。ノンレム睡眠には、大脳を休息させる働きがあり、レム睡眠には、熟睡と覚醒の橋渡し役として大脳を活性化させる働きがあります。この2つの睡眠のサイクルが、眠りの質と深く関わっています。睡眠中、体には特有の変化があります。その一つが成長ホルモンの分泌です。成長ホルモンは子供の成長に関わるホルモンと思っている方も多いですが、大人にとっても大切なホルモンです。脳内の老廃物を取り除くと言われており、細胞の新陳代謝も促し、健康や美容の源となります。
また、質の高い眠りは免疫力を高め、病気になりにくい体をつくります。
良い眠りは心の動きにも影響します。
一晩ぐっすり眠ると明るく前向きな気持ちになれた感覚をご経験された方は多いのではないでしょうか。
世界の睡眠事情の比較
日本人の睡眠時間は、世界主要国29カ国の中で韓国に次いで2番目に短いということも分かっており、日本は世界的に見て“睡眠不足の国”と言えます。
日本の平均睡眠時間がここまで短くなってしまっている一つの原因として、24時間営業の店舗の存在や、パソコン・スマートフォンの普及によって生活の夜型化が進み、就寝時間が次第に遅くなっていることが挙げられます。
そしてもう一つの原因は、日本人の睡眠に対する意識の低さです。海外では子供から高齢者まで対象別に睡眠教育が行われていることも珍しくありませんが、日本では幼稚園から大学までどの段階を見ても、専門学部を除くと系統的な睡眠教育が行われていません。このように日本は睡眠という分野において海外から大きく遅れをとっています。
出典:(毎日新聞)
さらにスマートフォンやパソコン画面から発生するブルーライトは、紫外線に近い短い波長であり、強いエネルギーを持つため体が「日中」と認識してしまいます。網膜にブルーライトが入ると、眠りを促す睡眠ホルモン「メラトニン」の生成を抑制してしまいます。本来は日中眠らない様に行われている働きですが、就寝前に多くのブルーライトを浴びると、メラトニンが分泌されにくくなるため、眠気が起こりにくくなります。メラトニンの生成を抑制するだけではなく、覚醒を司る自律神経「交感神経」を優位にしてしまう働きもあるため、休息を司る「副交感神経」が優位な状態になりにくく、リラックスできずスムーズに眠れなくなってしまうのです。
ブルーライトを多く発するスマートフォンやパソコンのディスプレイを長時間見ることにより、目に過剰な刺激を受け続けると、眼精疲労も起こります。
眼精疲労は頭痛や耳鳴り、めまい、吐き気などの症状を誘発することがあり、常態化すると頭痛、耳鳴り、めまい、吐き気のうち2〜3種類の症状が同時に現れることもあります。またテレワークが増えたことによる、寝つきの悪さの増加などから、テレワーク時の運動・活動量の不足や心身ストレスの増加が悪影響を与えていることも懸念されています。一方で、親から見た子どもの睡眠状態の変化については、昨年に比べ、就寝時刻が24時を過ぎる子どもの割合が減り、起床時刻も遅くなったことで睡眠時間の確保にはつながっています。
今後もしばらくコロナ禍という状況が続く可能性があるなか、心身ストレスや活動量を考慮して睡眠の質を上げる必要があると考えます。
―抜粋―
<専門家コラム アンチエイジングの鍵、メラトニン>
「メラトニン」は、睡眠に密接に関係するホルモンです。メラトニンが睡眠中に分泌されることで、睡眠の質が良くなり、夜ぐっすり眠り、心身の疲れやストレスを回復することができます。また、抗酸化作用や免疫力を高める作用があると考えられます。
メラトニンは加齢により減少します。成長期には深くぐっすり眠るので少しの刺激では覚醒しませんが、加齢とともに寝つきが悪くなったり、覚醒しやすくなってしまう。つまり加齢に伴って「睡眠の質」が低下してしまうのです。ただ、睡眠中の工夫でこれを補うことは可能です。たとえば、部屋の環境を暗くすること。真っ暗な環境を作ることでメラトニンの分泌を促すことが出来ます。最近では寝る前にスマートフォンを見る、という人も多いと思いますが、眠りにつく1時間前にはやめた方が賢明です。また、良質な寝具を使うこと、睡眠中に身体に加わる余計な刺激を減らすことも、睡眠の質向上に有効でしょう。
このメラトニンが「酸化ストレス」を減少させるのが、アンチエイジングに大きく関わるところです。たとえば、皮膚の老化の7割は「光老化」つまり「酸化」と言われています。皮膚だけではなく、血管老化や神経機能の老化も酸化ストレスによるところが大きい。血管が老化すれば動脈硬化のリスクが高まりますし、神経機能の老化は認知症につながります。つまり良質な睡眠を取ることにより、見た目の年齢だけでなく、身体の中や脳までも若々しく保つことが出来るのです。
(米井嘉一教授より)
以上のことから、毎日の睡眠習慣を見直すことは、健康増進、アンチエイジングに大きく影響することが理解していただけるかと思います。
ではここからは、睡眠の質を向上させるための条件をもっと詳しくお話していきましょう。
睡眠とパフォーマンス
睡眠に関しては世界でさまざまな研究が行われ、アスリートたちのパフォーマンス向上のためにも役立っています。睡眠を充足させるだけでフィジカル面の向上と判断力の向上の両方が起こる事が分かってきており、パフォーマンスが生涯年収に直結するアスリートの世界では睡眠に対する取り組みを積極的に行っております。
元フィギアスケート選手浅田真央さんが宣伝するエアウィーブ、大谷翔平選手が宣伝するnishikawa、野球選手やラグビー選手が宣伝するマニフレックスなど、寝具のCMをアスリートが行うことが多いのもそのためです。
アスリートと寝床環境、つまり人が良いパフォーマンスを行うためには睡眠の質を上げていくことがとても大切なのです。また睡眠には摂取する栄養素によっても影響することが分かっています。ご自身の日中のパフォーマンスを振りかえってみて以下に記載します条件をご参考にして頂けますと幸いです。
睡眠と食事
実は、良い睡眠のためには栄養を取ることが最優先なんです。中でもタンパク質、ミネラル、ビタミンの3栄養素は必要です。また5大栄養素の摂取量でみると、目安としては、カロリーベースで炭水化物:脂肪:タンパク質=6:2:2とするのが理想的です。現代人は、炭水化物が多く、タンパク質が少ない傾向にある人が多く、特に中高年以上の方に顕著にみられるます。炭水化物を摂りすぎると成長ホルモンの分泌を抑制してしまうので、成長ホルモンの分泌を促進させるためにタンパク質を適量摂る必要があります。消化に時間がかかる肉類と、魚や豆、卵といった比較的消化の良いタンパク質を上手に組み合わせて摂るのが良いとされています。
また、寝る直前の食事はできるだけ避け、2~3時間前には済ませるようにしてください。忙しい社会人は、それが難しいようであれば、食事を2度に分け、夕方に軽食を摂り、21時すぎにヨーグルトやチーズ、バナナなどの消化の良い物を食べるという方法をとることで、睡眠に悪影響を与えずに済みます。深夜に帰宅した場合は何も食べないほうが良いですが、ホットミルクやハーブティーなどの温かい飲み物であれば空腹感をやわらげ、安眠を促します。
参考:西川 眠りのレシピ「寝る前の食事にはご注意」より
睡眠と運動
運動は一時的に体温を上げますが、徐々に体温が下がるタイミングで眠りにつくと寝入りがスムーズになります。激しい運動は交感神経を刺激してしまうため、眠る直前ではなく、就寝の2時間ほど前に適度な運動を行うことが一番効果的で、睡眠前に行う手足を優しく温めるストレッチなども効果的です。これは、人は眠りに入るとき、手足から放熱し深部体温が下がるためです。
参考:西川 眠りのレシピ「運動は寝る3時間前に終わらせるべし!」より
寝室環境
光・音・香り・温度や湿度などの寝室の環境を整えることも大切です。まず、光についてですが、光を浴びると脳は活性化され、体内時計にも影響します。そのため入眠の際には遮光カーテンや雨戸などを利用し、光を遮断する必要があります。暗い環境で眠ることはメラトニンの分泌も促進します。音については、寝る前にリラックスできる音楽を聴くのはいいですが、寝ている間はできるだけ静かな環境が理想的です。人の声が一番睡眠を阻害するため、テレビやラジオをつけたまま眠るのは良い環境ではありません。香りについては、ラベンダーやカモミールなどの香りによってリラックス出来ると、入眠がスムーズに促されます。温度については夏場は約25℃~26℃、冬場約22℃~23℃、湿度については50%~60%が理想的です。
寝具
寝返り・発汗・体温低下などの、睡眠中の生理的変化を妨げない寝具を選ぶことが重要です。ふとんは、保温性・吸湿性・放湿性に優れたものを選び、さらに掛けふとんはかさ高性・軽さ・フィット性を、敷きふとんは硬さ・クッション性に留意します。寝床内環境と呼ばれるふとんの中の温度や湿度は、快適とされる温度33±1℃、湿度を50±5%に保つために、季節や室温に応じてふとんの種類や素材の組み合わせを変えるとよいです。また、まくら選びも重要で、ゆるやかなS字の首筋の隙間を埋めることのできるものだと良いです。自分に適したまくらを選ぶことで、睡眠時無呼吸のリスクは軽減出来ます。
参考:「In Life vol.7」(西川)
まとめ
上記いろいろ記載しましたが、自分がリラックス出来ていて心地いいと感じることが大切なので、できるところからやってみて頂けると嬉しいです。
家族のため、会社のため、やや自分を犠牲にしてきてしまった人も、来年こそは、自分自身の健康を見つめなおす1年にしてほしいと願います。またイビキや中途覚醒などでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。良い眠りをとる事が、将来の自分の健康につながり、さらには家族、会社にも良い影響を与えていくことは間違いありません。
長文にお付き合いいただきありがとうございました。LINEのお友達登録もよろしくお願いします。
参考文献
睡眠の質向上で、アンチエイジング効果を検証|共同研究|眠りの研究|眠りの研究|ふとん(布団)などの寝具なら西川公式サイト (nishikawa1566.com)
https://www.nishikawa1566.com/company/laboratory/kenkyu/02/
健康づくりのための睡眠指針 | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tyojyu-suimin/kenkozukuri-suiminshishin.html
「働き方・休み方改善指標」を用いた自己診断 | 働き方・休み方改善ポータルサイト (mhlw.go.jp)
https://work-holiday.mhlw.go.jp/diagnosis/?utm_source=yahoo&utm_medium=listing&utm_campaign=202211